「好きなことを仕事にする」ということ

昨日は、妻のママ友会が開催されることになり、娘と夜を過ごすことになった。
せっかく時間ができたので、二人で映画に行ってきた。
名探偵コナンを娘の希望で一緒に観に行き、その後はおおたかの森駅近くでゆっくりと過ごした。
私が住む流山おおたかの森は、10年前は人口15万人ほどだった街が、今は21万人まで急速に増えている。
それに伴って、1,000人を超える小学校が市内にいくつも存在するという、日本の中ではかなり珍しい人口爆増地域である。
駅前は子ども向けの目を引くコンテンツが用意されており、365日のうち100日以上、駅前で何らかのイベントが行われているという、これもまた珍しい地域だ。
その日、映画が終わった後に流山おおたかの森ショッピングセンターの前を通ると、大道芸人が芸を披露していた。
普段なら娘と一緒でも通り過ぎてしまうところだが、娘が強く足を止めたため、私も見ることとした。
その大道芸人は、4年前まで普通の会社員として一生懸命勤めていたそうだが、「自分の好きなことを仕事にしたい」という思いで会社を辞め、大道芸人としての道を歩んでいるとのことだった。
レベルは高く、彼の得意なコマを使った芸は、通常2〜3個を同時に回すことが限界のところを、見たことのない4つを同時に回すという、相当な鍛錬を積んでいることがわかるものだった。
本当に頑張っていたので、芸が終わった後、私としては少し大きな額を「お気持ち」としてお渡しした。
しかし、私は元銀行員である。
やはり、その1回でどれくらい稼げて、1日に何回披露できて、1ヶ月に換算するといくらの収入になるのか――そういったことを、フェルミ推定的に想像してしまう。
そして、思った。
「好きなことを仕事にする」ことが、必ずしも金銭的な幸せに直結するとは限らないのだ、と。
私自身を振り返ってみると、どうだっただろうか。
もともとは少年野球をやり、中学からはバドミントンに打ち込んだ。
途中までは、バドミントンで生きていくのではないかとさえ思っていた時期もある。
あるきっかけで「バドミントンだけで食べていけるのは一握りだ」と知り、大学受験を志した。
大学では好きな歴史を学んだ。
歴史を学ぶ中で銀行に行きたいという思いが芽生え、銀行を受けることになる。
とはいえ、本当にやりたいことが何かは、自分でも分からなかった。
それは銀行の方にも正直に伝えた。
「分からないけれど、それを見つけるために、百戦錬磨の中小企業の社長とお会いし、お話しできる――これが自分の人生にとって素晴らしい機会だと思う」と。
そう前面に出して、就職をさせてもらった。
入ってからは、忙殺される日々の中で、それが本当にやりたいことかどうかは、もはや分からなくなってしまった。
ただ、一つ言えることがある。
自分がやっていることがいつの間にか「やりたいこと」になり、それが積み重なって「自分だからこそできること」につながっていったのではないか、ということだ。
若い人の中には「自分探しの旅」を始める人もいる。
けれど、旅をしていれば自分のできることが見つかるわけではない。
興味のある方向を一生懸命、毎日毎日積み重ねていく中で、自分のやりたいことが見つかり、その方向に進んでいくのだと、私は思っている。
独立してから、毎日が本当に楽しい。
確かに全国に出張する機会は、今年も毎週のようにある。
今これを書いているのも、前日入りのために訪れている広島である。
日曜日に一人で広島まで来て、こうして自分の今後の進むべき方向について考える時間ができる――銀行員時代には、こういう時間はなかったように思う。
お客さまのおかげで、毎日かけがえのない経験をさせてもらっているのだと、強く感じている。
これからどう進んでいくべきか。
一人でずっとやってきた中で、2名、3名と人を増やして自分の進む方向を極めていく道もあるだろう。
一人でできる限界を見極めていく道もあるかもしれない。
AIを活用し、外部の人間に頼らずに自分のできることだけに集中していく方向性もあるだろうし、一方で、人にしかできない部分を多く担っているからこそ、人を雇うことで深めていく道もあるだろう。
何か大それたことを思考しているわけではない。
ただ毎日、自分自身が面白いと思い、もっと成長したいと思い、お客さまのためになりたいと願う。
その中でお客さまと一緒に未来を切り拓き、喜んでもらう。
実績がつき、売上がつき、利益が上がっていく。
この連鎖こそが、私の「本当の喜び」である。
これができたとき、今でも身が震える。それくらい嬉しい。
そのためには、私が「灯り」を持って先を歩くこともあるだろう。
手を携えて、分からない道を一歩一歩、ともに切り拓いていくこともあるだろう。
サラリーマン時代は、目の前のことだけに集中していれば良かったかもしれない。
しかし経営者は違う。
「今の一歩」に甘んじることなく、5年後、10年後に自分や会社がどうなっているかに思いを巡らせ、将来を予想し、それに対して今から手を打っていく必要がある。
私自身がそうであるし、お客さまもまた、同じ状況にある。
だからこそ、同じ気持ちになって、共に歩んでいけるのだと思う。
話を、あの大道芸人に戻したい。
実は彼、最後の一発を何度も失敗していた。
普通なら、途中で妥協して別の形で終わりとしてもよかった。
50〜60人ほどの観客がいて、緊張感のある場で、簡単に妥協できる状況だった。
でも彼は、大汗をかきながら、それでも自分のこだわりの中で、お客さまに「成功した姿」を見せることにこだわっていた。
もちろん芸の成功も大切だろう。
しかし、生活面ではきっと苦しいだろうとも思う。
それでも、自分のやりたいことをやって、人に見てもらい、人生を全うする――それこそが彼の幸せであり、お金には変えられない「彼自身の価値」なのだろう。
私自身も最初から全てがうまくいったわけではない。
何か特別に恵まれた状況にあったわけでもない。
だからこそ、彼を特別に応援したくなった。
応援をした後、静かにその場を立ち去った。
「答えのない時代」に、それでも自分の信じる道を進む人たちが、世の中にはたくさんいる。
経営者も、芸人も、たぶんみんな同じだ。
悩みながら、それでも一歩ずつ前へ進む。
その歩んだ道は分かる人には伝わり、心を動かす。
改めて思った夜であった。