財務支援事業について

 

「うがわ、税理士免許を取って、うちの税務申告をしないか?」

 

今回のストーリーは、とある取引先の社長の一言から始まった。

 

「いやーそれだけは、それだけは無理です」

 

普段、お客さまに否定の言葉をほぼ言わない私でさえ、あまりのことの大きさについ本音がでてしまった。

 

税理士免許を取るには一般的に4,000時間が必要と言われる。1日3時間勉強できた場合でも1,300日、つまりほぼ4年を費やす計算だ。

 

そもそも、こんなに全国を回らせて貰える生活をしながら、勉強を続けることは不可能に近い。
MBAを取った2年間の日々を思い出すと、それが4年も続くなんて…

 

ただし、その言葉(税理士免許を取って、うちの税務申告をしないか?)は脳裏にずっとにあった。

 


今の仕事は経営戦略~事業開発が中心。経理財務にフォーカスはしていない。そのバランスが銀行員っぽくなく、お客さまに評価されるのだと自覚している。

 


それとは別に、もう少し金融に近い仕事もしたい。そんな気持ちがあったのだろう。

 

そこで、大きな転機となる出来事があった。
これもとある社長から、とある会社を紹介され、経営内容を見させてもらった時だ。

 
詳細は割愛するが、6ヶ月後にキャッシュがバーンアウトすることが見えていた。もう手遅れだ。
私にできることは、売却活動に走るだけだった。結果すべてのM&A仲介に断られ、独自の人脈で最大手に持ち込んだが、けんもほろろにやられるのであった。

 

「もし、この会社に5年前、いやせめて2年前に財務を見てくれる人がいれば。みんなが幸せになれる道があったのに」そんな考えが浮かんだ。

 

私は決算書を並べてみるだけで、企業の強み・弱み、社長の経営に対する考え方や性格、隠しておきたいことなど、多くのことを想像することができる。銀行時代に紙がボロボロになるまで、見過ぎで手垢が付くまで決算書を見まくったからだ。

 

そんな特技を体得した私が、2年前に同社を担当することができれば、多くのことができたはずだ。
私も経験した”企業再生”という辛く苦しい道を歩まなくて済んだはずだ。

  

“日常”から企業の決算書や試算表を拝見し、財務の目線から経営に切り込む。
経営者が企業の現状を客観的に認識すること。
銀行からの資金調達を中心に、経営戦略や金融機関を意識した決算書作りをすること。
時にはもう少し深く経営に入り込み、事業開発をすること。
それが、2つ目に私がやりたいことの本質だと気づいた。

 

一時期は”税理士事務所をM&Aで買収する”そんなことも考えた。
それは多分できる。でも、私のやりたいことではない。
私が税理士になるよりも、税理士とともに企業を支える。財務をより身近に置き、日頃から経営に切り込む新しい役割が求められていくのではないか。

 

2カ月前に、すべてが重なる瞬間があった。
そして、新しい仕事を始めることを決意する。

 

それはまた次回に。