2025.07.24
借入をしたくない経営者のみなさまへ

借入をしたくない経営者のみなさまへ

 
 

今回は、鵜川太郎さんの5本目の寄稿記事をご紹介します
私の自己紹介記事も、ぜひあわせてチェックしていただけると嬉しいです。


こんにちは、鵜川太郎です。

今回は、借入をしたくない経営者のみなさまへ向けたお話をしたいと思います。ぜひ、最後までご覧ください。

金利は販売管理費のひとつである 〜事業に必要な「コスト」の正しい理解〜

金利は販売管理費のひとつである 〜事業に必要な「コスト」の正しい理解〜

「借入はしたくない。金利はできるだけ安い方が良い。高いところから借りる理由はひとつもない。」
とある経営者とランチをしていたとき、こんな言葉を耳にしました。
私が日常的にお話をする経営者の5~6人に1人くらいの方は、そのようなお考えを持っています。

確かに借入をすることなく、金利を支払うこともなく、それで経営ができるのであれば、その方が良いかもしれません。
私自身銀行に入るまでは、借金=悪のような考え方はあったと思います。
ただ、経営者とお話をする中で、さまざまな経営者と対話し、企業のお金の流れを深く理解するようになってからは、その考え方が一面的であることに気付きました。

だからこそ、今では「借入をしない=良い経営」ではないという視点を持っていただきたいと考えています。

金利も考え方しだいである

金利も考え方しだいである

最近ある経営者が「金利は販売管理費と同じだよ」と言われたことがずっと耳に残っています。
確かに多額の資金を必要とする不動産業をしている方だったので、そのように言うことで銀行付き合いを円滑にしたい。と思ったからかもしれません。

ですが、経営者の立場に視点を動かしてみると、確かに金利は本質的に「販売管理費」と同じように、事業を営む上で欠かせない経費(経営をしていくための費用)になりえます。

銀行からお金を借りることができなければ、新しい物件も買えなければ、リフォーム代、一時的な人件費なども払えないかもしれません。
それらの費用を一時的に立替して、物件が売却した時に返済する。
これは一例で、全ての事業にそのような一面があると思います。金利はまさに経費なのです。

ある日突然の資金需要

ある日突然の資金需要

ここで、象徴的なエピソードをご紹介したいと思います。
皆様のご記憶にもあるかと思います。
とある新興形航空会社は無借金経営にも関わらず、民事再生法を受けた話です。少し前の出来事です。
同社は新規の国際線参入や機材更新を進めるため、当時としては画期的な大型航空機を先駆けて大量に発注しました。
同業他社に先駆けて発注したことは業界の中では画期的と、もてはやされました。

しかし、発注後に事業環境が変化。
特に航空燃料の高騰や為替の問題などが次々に発生し業績が悪化。
現預金でまかなっていた運転資金が赤字資金として流出し、運転資金を借入で賄う必要が発生しました。
ただし、同社は航空機リースをベースに資金調達を行っていたため、換金性のある資産がなかった。
そのため、銀行として比較的難易度の低い、資産を担保にした資金調達を行うことができませんでした。

また、無借金であったため、日常的な銀行との会話を含むリレーション(関係性)ができておらず、銀行も対応当時の経営状況の変化を把握できなかったと思います。
こういった経営環境の変化は、起こってから起こったことを説明するのではなく、こまめに銀行にリアルな話として伝える必要があります。
結果としてメインバンクに支えてもらい、危機を乗り越える。その選択肢を失ってしまったのです。

その後は皆様のご記憶にあるように会社更生法を受けました。幸いなことに、今では隆々とした企業へ生まれ変わっています。
無借金は決して悪い考えではありません。
金利をできるだけ抑えて他に経費を掛けたいという気持ちも企業経営をしている身として理解できます。
ただし、企業が成長や変化に対応していくには借入は、リスクヘッジであり、保険という意味でも必要だと思います。

どのように銀行と付き合い、万が一のケースに備えていくか。私たちが戦略的に銀行と付き合うことで、一緒に進めていければと思います。

銀行借入をする理由

銀行借入をする理由

本業の収益だけで、運転資金や投資資金をまかなうのが理想的。
確かに、借入をせずに本業のキャッシュフローで借入に頼らない経営は、美しく見えて理想的です。

でも、会社経営をしていると、決して綺麗だけでは済まされない世界がたくさん広がっていると思います。
先のとある航空会社の話も、美徳ではなく足元を歩くかのように銀行付き合いをしていれば、違う今があったかもしれない。
将来の投資や突発的な資金需要に備えるため、

  • 計画的に「借りておく」こと

  • 運転資金の枠を確保しておくこと

  • 現預金を厚めにもっておくこと

私は立派な経営戦略であり、経営判断だと思っています。
特にに銀行との信頼関係は、一朝一夕に築けるものではありません。
いざ大きな資金が必要になったときに、「今まで一度も借りていないから状況が分からない。信用がない」と言われては手遅れです。

日頃から少額でも借入を行い、返済実績を積み重ねておくことで、将来の選択肢を広げる“経営の布石”となることは間違いないです。
つまり、借りないことが常に正しいのではなく、必要なときに借りられる状態をつくっておくこと。経営のリスクに備える力になるのです。

一つの目安は現預金残高=借入残高となること

一つの目安は現預金残高=借入残高となること

最後に経営者の皆様に、ひとつアドバイスをさせていただければと存じます。 それは、「現預金残高=借入残高」をひとつの目標にして欲しい、ということです。

運転資金や設備資金などで借入をした残高=現預金としていくことで、銀行に頼りながらも一定の緊張関係(万が一の場合は返そうと思えばすべて返せる。でも返さない状態)を作ることができると思います。

また、運転資金の補填として現預金を厚めに持っておくために、借入をするということも考えられます。
単純な現預金資金だと、銀行から借入をすることが難しい場合もあります。
私たち専門家が財務資料を拝見しながら、具体的な借入戦略を立案実行していくことができます。

上記は目安であった実際は会社の業態や年商、業績の安定性や歴史など様々な要素を勘案しながら、最適な構成(ALM)をともに検討していきます。
私たちにお任せください。