2026.02.14
事業再構築時の銀行借入のポイント

 

中小企業が金融機関から融資を受ける場面は、大きく二つあります。

 一つは成長投資のタイミング。もう一つは、事業の立て直しや資金繰り改善が必要なタイミングです。

 

今回は後者にスポットライトをあてていきたいと思います。

単に「資金が足りない」という説明では融資は通りません。重要なのは、「なぜ悪化したのか」「どう改善するのか」「今後の返済原資はどこから生まれるのか」を論理的に示せるかどうかです。

 

実際に私が作った金融機関向け説明資料の内容をベースに、融資を引き出すためのポイントを整理します。

 

1.多角化や初期投資が招く悪化をどう説明するか

 

中小企業が成長過程で陥りやすいのが、複数事業の同時立ち上げや新規事業への失敗です。

 

言わずもがな新規事業を開始すると、

・設備投資

 ・人材採用

 ・広告費

 ・立ち上げ期間中の赤字

これらが一気に発生します。売上は伸びても、利益を生み出したり、返済原資たるキャッシュフローを創出できないことがあります。

 

銀行はこのとき、「成長過程の一時的悪化」なのか、「構造的な悪化で赤字が続いてしまうのか」のかを見極めます。

一次的な悪化と銀行に捉えてもらうためには、単なる口頭の説明では不十分で、銀行担当者が説明ができないと構造的赤字と判断されてしまうことがあります。

 

そのためには、

・各事業の内容を銀行にも分かりやすいようにかみ砕く

 ・固定費と変動費を踏まえた現実的な来期以降のプラン

 ・なぜ黒字化を達成できるのかの説明

を明確にストーリーを立てて説明する必要があります。

単に赤字であっても「売上は伸びています」では不十分です。

 “収益に転換する道筋”を示せるかどうかが分かれ目になります。

 

2.キャッシュフロー悪化要因を具体的に分解する

融資審査で最も重視されるのはキャッシュフローです。

勘定あって銭足らず(帳簿上の収支計算では利益が出て(黒字)いるのに、実際の手元現金(キャッシュ)が不足している状態 )とも言いますが、黒字になっていたとしてもキャッシュフローが不足している企業も多くあります。

 

業績以上に資金繰りが悪化している場合、その原因を分解する必要があります。

・工事費や設備費の想定超過

 ・開業時期の遅延

 ・売掛金の入金遅れ

 ・貸付金の回収遅延

 ・人材投資の先行負担

これらを「いくら」「いつ」「どのように」発生したかを隠さずに明確にすることが大切です。

銀行は「わからない」ことを最も嫌います。

 

さらに重要なのは、「今後どう改善するか」です。

・未入金の回収スケジュール

 ・分割返済条件

 ・損失計上をするかどうか

 ・月次回収額

ここまで具体化できれば、銀行はリスクを測ることができます。

無理にすべてを「できます、やります」ということは、逆に現実を見れているのかと判断されて、経営能力というところに疑問符が湧いてしまいます。

不透明さこそが最大のリスクであり、正直ベースのコミュニケーションが大切です。

 

3.債務償還能力を数値で具体的に示す

銀行が必ず確認する指標が債務償還年数です。

簡易債務償還年数 = 有利子負債 ÷ (当期利益+減価償却費)

ここで重要なのは、今現在の債務償還能力は仕方ないとして、改善後の姿を示すことです。

・利益回復後のキャッシュフロー

 ・運転資金を差し引いたネットベース

 ・借入増加後のシミュレーション

これらは銀行としても当然に算定をしているのですが、こちらから提示することで「借りても返せる」状態を証明や安心感につながります。

この辺りを月次や年次で管理して継続的にコミュニケーションができることが、私たちの仕事であり、強みです。

融資は将来のキャッシュフローの前借りです。そのことを忘れずに、計画を立てていくべきです。

 

4.資金使途を明確に分解する

「資金が5,000万円必要です」という説明では不十分です。

銀行は内訳を正確に求めます。

・取得資金

 ・税金支払い

 ・改装費

 ・運転資金不足分

など分解すると、本当の使途が存在します。

さらに、

・自己資金はいくらか

 ・借入金はいくらか

 ・返済原資は何か

を明示します。

資金使途が具体的でないと、融資の審査は前に進むことがありません。

ただ、私が属していたメガバンクなどは「資金調達構造分析」といって、お客様が申し出た資金使途がバランスシート全体として合っているか(運転資本資金、固定資本資金)ということを判断しています。

この判断により真の資金使途を把握し、返済能力の蓋然性を判断したりしています。

少し説明が難しくなりましたが、この辺りのプロフェッショナルな部分は私たちでこそ対応できる部分です。

 

 

5.担保価値と保全状況を整理する

担保がある場合、評価方法を整理します。

こちらは単に取得価格をベースにしたものでは不足しており、もう一歩踏み込む必要があります。

・固定資産税評価額

 ・路線価ベース評価

 ・収益還元価格

借入額が評価額に対して十分低いことを示せれば、銀行にとってリスクは限定的になります。こういった評価方法を知っていて、締めせることは大きなアドバンテージになります。

ただし、担保があるから通るわけではありません。預金30百万円を出すから、30百万円融資して欲しいという内容は企業によっては通りません。あくまで“最悪時の回収手段”で、それを回収できるから大丈夫ということにはならないのです。

本質は返済能力であり、その議論を避けて通ろうとする(確かにこちらの説明は骨が折れるのですが)と融資を受けられなくなります。

 

6.事業モデルの転換と選択と集中

業績悪化局面では、事業の見直しが不可欠です。全部やりますといったような内容では債権能力があるのかという判断をされてしまうことがあります。

例えば

・広告依存型モデルの見直し、あるいは広告はどこまで出すかのコントロール

 ・人員体制の縮小

 ・黒字事業への集中

 ・採算の合わない事業の縮小や撤退

撤退判断ができるかどうかは、銀行が重視するポイントです。判断をズルズルと先延ばしにしてしまい、傷口が広がってしまった。あるいは、キャッシュが尽きそうでは打つ手はありません。

多角化よりも、事業の集中化をはかり、収益の柱を太くすることが優先されます。

 

7.経営体制の再構築

事業が縮小すると、多くの場合に人員の削減が図られ、特に管理部門はそのしわ寄せがきやすいことが現実です。

再生局面では銀行への報告だけでなく、月次や週次をベースにした細かいコミュニケーションが大切です。悪化の兆候を逃すことなく、早期に施策と実行を繰り返し続けることが大切であるからです。

・外部の顧問の活用による人員のアウトソース化

 ・月次管理体制の整備と報告体制

体制を見直して、今の経営状態に合わせていくことは銀行にとって安心材料です。

 

 

 

 

 

8.融資は単発ではなく関係強化の端緒である

企業にとって忘れがちなことは融資後にどのように銀行と付き合っていくかということです。

・経営や資金繰り状況の定期報告

 ・月次試算表の共有

 ・課題や問題の早期開示によるコミュニケーション

銀行は“後出し”を最も嫌います。信頼関係が崩れると定性(感情的目線も含め)的にも追加融資を得られることができません。継続的な情報開示を約束できる企業は、追加融資の可能性が広がります。

 

まとめ

銀行から融資を引き出すために必要な気構えは、資金が必要になってから準備する、状況が悪くなってから準備するのではなく、 日々のコミュニケーションです。

金融機関にとって安心できる取引構造をつくること。 それが、資金調達を安定させる最短距離です。

そのためのお手伝いをぜひお任せください。