【元メガバンク×経営・事業支援×ビジネスマッチング:鵜川太郎】コラム・大学での金融授業と銀行員の考えていること

今回は、鵜川太郎さんの4本目の寄稿記事をご紹介します
私の自己紹介記事も、ぜひあわせてチェックしていただけると嬉しいです。
こんにちは、鵜川太郎です。
今回のNoteは、小話を挟んでみたいと思う。
先週、母校青山学院大学で、大学2年~4年生向けに授業を行ってきた。
経済学部の授業で「銀行の中小企業向けファイナンス」という題目である。

少し横道に逸れるが、今回授業を持つきっかけとなった「金融青山会」との出会いは学生時代にさかのぼる。
学生当時、どうしても銀行に入りたかった私。
文学部から10年以上(当時さかのぼれるデータの限界値)は総合職でメガバンクに入った例がなかったことを知り、愕然。
(後々冷静になって考えると、誰も文学部からメガバンクに行こうとは思わないわけで)
何とか内定を勝ち得るべく、様々な行動に出た。
金融の勉強やOB訪問は、みんながするので当たり前。差がつかない。
どこで調べたのか、中小企業の実態を知るために経産省主催の地域企業への訪問企画(約5日くらい関東中の企業を回る)に参加。
勉強だけでは知ることのできない生の話を伺いたく、金融青山会へも門を叩いた。
今振り返ると、雲をも掴む一環だった。
金融青山会はその名の通り、銀行証券生損保を中心とした金融業に勤務する(したことのある)OB・OG組織。
定例での講演懇親会や学生を含む後進の金融業界への就職支援だけでなく、単位取得授業をも受け持っている。伝統ある組織。
金融実務が分からない20~22歳の大学生に、できるだけ専門用語を使わずに90分の時間を使って”考え方”を伝えるにはどうしたら良いか。
1週間考えた。
今回の構成は、
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事業をする際にお金を借りるとはどういうことか。仮に、今すぐ書店を始めたい。500万円必要。でも、お金がない。お金を貯めて数年待つ?借りることで今すぐ始める?
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お金を借りる時と貸す時は考え方が違う。貸す時は相手のことをよく知る必要がある。方々にお金を借りてる友達に、自分のお金を貸せますか?
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銀行も同じ。銀行のお金ではなく、自分のお金を貸せるかのように考えることが大切?あなたは年10万円の利息のために、1,000万円を貸すリスクを取れますか?
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経営戦略、事業戦略はすごく大切。でも一番大切なのは、会社の社長。どんな魅力的な事業もやるのは人だから。そのために社長に何を聞く?
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最後に”某スキマバイト社”を事例に、事業内容・経営戦略・経営者・財務内容・リスクを銀行員の目線で解説。
最後に「あなたがその某社から100億円貸して欲しいと言われたら、貸しますか?」を課題とし、稟議書を作成書いてみる。
学生の印象に残ったポイントは、
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お金を借りることと、貸すこと、時間を買うことの意味を知れた。
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金額が大きく、100億円ともなると感覚がなくなってくる。でも、どんな場合でも自分のお金でも貸せるかどうかは銀行員として持つべきことだと知った。
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銀行は数字で機械的に物事を判断してそうなイメージがあったが、事業は人であり社長をよく見ることの大切さを知った。
今回私として事業に対する教訓は、
「銀行というお金を貸す立場というのは特殊で、銀行員以外は銀行員がどう考えているかを想像することが少ない」ということだ。
銀行が企業へ融資を行う際には、「返済可能性(返済能力)」を最重要視する。であるが、企業がお金を借りる時は、まずはその時に「こういう理由でお金を借りたい」に重点が置かれやすい。
銀行員を9年間していたが、きちんと事業計画だけでなく返済計画(資金繰り管理)まで立てられていた会社は殆どない。
返済は「何とかする」ということで、実質的な金繰償還(収益で借入の返済をすることができず、現金を減らすことで返済をしている状態)をしている会社も多いのだ。
勿論、金繰償還が悪い訳ではない。
会社経営をしていると物事が計画通りに進むことなど、ほとんどない。
ただ、きちんと計画を立てて予実を管理していくことが、経営の基礎力を上げていくことは間違いない。
だから、経営者とともに数字に強くなっていくことがとても大切だ。
それは、同じ財務内容であっても「どのような数字をどのように伝えるか」によって、銀行からの評価は多いに変わるからでもある。
それはとても勿体ないし、私たちのような人物が多いに貢献できる部分だ。
銀行員としては当たり前の話であっても、やはり銀行と関わりの薄い人にとっては「そうなんだ!」という驚きをもって知られるのである。
だからこそ、お金を貸す立場(銀行)のことを経営者にも知ってもらうことで、経営者が銀行を利用しやすいようにできる。
これができたなら、銀行は最高の経営パートナーになるはずだ。
最後に…
この授業日は、前日に4時間かけて福井市に行き、会食でしこたま飲み、5時半に起床。
新幹線で10時半に渋谷に着き、11時から90分しゃべり続ける。
家に戻って、夕方から娘の誕生日のためディズニーへ。翌日9時~21時までディズニー。そう、経営者には常人じゃない体力を持ってる人が多いという話をし忘れた。
そんな話もセンセーショナルでありながら、経営者の現地現場だ。